ようこそ、「名古屋都市圏研究会」のホームページへ
私たち「名古屋都市圏研究会」は、中京大学、椙山女学園大学、愛知県立大学、名古屋大学の研究者・学生による自主的な研究組織です。
私たちは、都市を舞台に「市民社会インフラ(civic infrastructure)」が私たちの生活にどのような影響をもたらすのかについて、名古屋都市圏を対象に調査研究を行っています。
橋や道路だけがインフラではない。喫茶店やスーパー、公園、遊び場、公民館・集会場、図書館、趣味サークル、子育てサークルや高齢者サロン、子ども食堂など、私たちの交流の形や暮らしの質を左右する物理的な場(施設)、人と人とのつながり(ネットワーク、組織)、活動や制度が市民社会インフラであり、それがないと、私たちの日々の暮らしは持続しないと思います。
人々がゆるやかにつながり、助け合う可能性を高めるのは、市民社会インフラのどのような条件なのか。逆に、人びとが孤立したり、孤独になったりする可能性を高めるのは、どのような条件なのか。
健全な市民社会インフラがある場所では、人間同士の絆が生まれる。それは当事者たちがコミュニティを作ろうと思うからではなく、継続的かつ反復的に交流すると、特に自分が楽しいと思う活動のために、自然に人間関係が育つからだ。市民社会インフラをきちんとデザインして、構築し、維持し、投資すれば、私たちはコミュニィとしても、個人としても、幅広い恩恵を受けられる。力強い市民社会インフラが存在すると、友たちや近隣住民の交流や助け合いや協力が増える。逆に、市民社会インフラが衰えると、社会活動が妨げられ、家族や個人は自助努力を余儀なくされます。
市民社会インフラは、人々が互いにつながり、交流するための定期的な機会をサポートする物理的な場(施設)、人と人とのつながり(ネットワーク、組織)、活動や制度です。
ここでいう物理的な場(施設)は、土地、建物、道路など都市空間を構成する物的・人工的環境、すなわち、建造環境(built environment)です。都市を建造環境として捉えたのは都市社会学者、デヴィッド・ハーヴェイ(Harvey, David)ですが、彼は、市場経済のもとでは、短期的な利潤追求が企業の主要な目標となるため、見えざる手によっている限り、適切な建造環境は創出され難い。そこで、政府が介入し、社会に存在する余剰を公債発行や財政投融資を通じて吸収して公共事業を行い、それによって建造環境を創出するという資本の第二次循環(the secondary circuit of capital)が作り出されるといいます。
ここで大事なのは、公園、遊び場、公民館・集会場、図書館などの公共空間、喫茶店や食料品店などの商業施設、街路や交通といったインフラ施設など人工的に造られた建造環境が、住民の健康やウェルビーイングと深く関係していることです。これについては、既に多くの研究が示していますが、建造環境を、歩きやすさ(walkability)などで捉えようとしていますが、どういった指標によって適切に捉えるかについては課題が多く残っています。
そして、私たちの研究においてとりわけ重要なのは、建造環境が、人と人とのつながり(ネットワーク、組織)との関連、さらに、これらの二つを支える活動や制度との関連です。
これから定点観測的な調査と、「市民社会インフラマップ(まちの居場所マップ)」などを作成し、社会実装につなぎたいと考えています。
2020年2月、名古屋市の50学区で実施した調査です。